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【収録内容】
■前編
西暦585年、新羅から一人の武将・伊真が倭国へ渡る。鍛冶部として時の権力者・蘇我馬子に仕えることになった伊真は、不思議な魅力を持つ少年・厩戸皇子と出会い親しくなる。一方で、馬子と物部守屋の権力争いが激化する。

■後編
新羅出兵が決定する。しかし、戦闘の悲惨さを痛感した厩戸は貧民救済事業をしながら、出兵を止める策を練っていた。出兵が開始されると、馬子は邪魔になった大王・崇峻天皇(泊瀬部)を暗殺する。王位は額田部が引き継ぐことになるが、額田部は厩戸に摂政に就くよう依頼する。


 作:池端俊策 音楽:冨田 勲 制作統括:木田幸紀 演出:佐藤幹夫
【出演】本木雅弘 /ソル・ギョング /中谷美紀 /柄本 明 /加藤雅也 /宝田 明 /松坂慶子 /緒形 拳 ほか

6世紀後半、日本がまだ「倭国」と呼ばれていた時代。大和朝廷の支配者である豪族たちが権力闘争に明け暮れる中、歩むべき国家像を模索した若者がいた。誰もがその名と偉業を知りながら、その人間像は謎に包まれている「聖徳太子(厩戸皇子)」の実像に、壮大なスケールで迫る。 【収録内容】■前編西暦585年、新羅から一人の武将・伊真が倭国へ渡る。鍛冶部として時の権力者・蘇我馬子に仕えることになった伊真は、不思議な魅力を持つ少年・厩戸皇子と出会い親しくなる。一方で、馬子と物部守屋の権力争いが激化する。馬子は額田部皇女と図って泊瀬部皇子を大王に定め、守屋が擁立する穴穂部皇子を暗殺する。ここに至り、馬子と守屋の争いは全面対決へとなだれ込む。厩戸も馬子の軍勢に加わり、戦闘に巻きこまれるのだった。厩戸と伊真の活躍により馬子軍が勝利を収めるが、戦闘の悲惨さは厩戸の心に深く突き刺さる。今や実質的な最高権力者となった馬子の元に百済から使節が訪れる。使節は単なる親善目的ではなく、新羅との勢力争いに加勢を求めにきたのだった。■後編新羅出兵が決定する。しかし、戦闘の悲惨さを痛感した厩戸は貧民救済事業をしながら、出兵を止める策を練っていた。出兵が開始されると、馬子は邪魔になった大王・崇峻天皇(泊瀬部)を暗殺する。王位は額田部が引き継ぐことになるが、額田部は厩戸に摂政に就くよう依頼する。新羅からの撤兵を条件に、厩戸は引き受ける。こうして国政に参画することになった厩戸は早々に隋に使者を送るが、相手にされない。国家整備が急務と悟る厩戸だが、再び新羅への出兵を図る馬子と対立していく。 作:池端俊策 音楽:冨田 勲 制作統括:木田幸紀 演出:佐藤幹夫【出演】本木雅弘 /ソル・ギョング /中谷美紀 /柄本 明 /加藤雅也 /宝田 明 /松坂慶子 /緒形 拳 ほかcopy;2002 NHK

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サンゴジュの果実



前回に引き続き、サンゴジュの、今度は果実について紹介しておこう。写真は10月初めに撮影したもので、大きな果実序(花序)にたくさんの果実を着けている。果実は最初、赤色になるが、その後、熟したものから順次、黒色(暗紫色)に変化していくのが特徴である。そのため、果実序は赤色の果実の中に、黒色の果実が混じった状態となる。



果実は楕円形である。黒色に変化した果実はじきに水分を失い、果実の基部に離層が形成されて落下する。



樹の下には、黒色のしなびた果実がたくさん落ちていた。

ガマズミ属の花の多様性については2020年5月18日のブログで簡単に紹介したが、今回は果実の色の多様性とその意味について紹介しよう。

ガマズミ属では、果実序に着いた状態で果実の色が赤色から黒色に変化する種が多数、見られる。日本産の種では、サンゴジュのほかオオカメノキ、ヤブデマリ、ゴマキ、ゴモジュ、ヤマシグレなどがこのような色の変化を示す。果実序に赤色と黒色が混じることで、鳥類が好む色の組み合わせ(二色効果)を演出し、鳥類を惹きつける効果があると考えられる。また、鳥類に熟した果実を指し示す役割もあるのだろう。サンゴジュの場合、黒熟した果実の基部には離層が形成されて落ちやすくなる。これは鳥類が採食しやすくする効果もあるだろう。

一方、ガマズミのように果実の色が変化しない種も多数、見られる。果実は赤熟し、そのまま変化しない種としては、ガマズミのほかカンボク、オトコヨウゾメ、ハクサンボク、コバノガマズミ、ミヤマガマズミなどがある。また、チョウジガマズミは最初から黒色に熟し、キミノコバノガマズミのように最初から黄色に熟す種もある。また、日本には分布しないが、最初から青色に熟す種もある。これらの種の果実の基部には離層が形成されないまま、長期間、果実序についていることが多い。

最近の研究(Sinnot-Armstrong et al. 2020)で、ガマズミ属の果実の色と系統、果実の栄養価には関連があり、色が変化するグループの種から色が変化しないグループの種が分化し、さらに後者の中で、果実の色が果実の栄養価と関連しながら多様化していったと考えられている。ガマズミ属の様々な色の果実の中で、赤色の果実が最も水分に富むが脂質は少なくて低栄養価であり、青色の果実が最も脂質に富み、高栄養価であることがわかっている。

このような果実の色は、それを食べる鳥類の種類に適応して進化したもので、色が変化するグループは、その地域に長期、滞在している留鳥、色の変化しないグループは季節移動を行う渡り鳥によって採食されることが多いと推定されている。

サンゴジュとガマズミについて、この仮説があてはまるか検討してみると、サンゴジュはガマズミよりも早く、初秋に熟し、留鳥のメジロによってよく採食されることが報告されている。一方、ガマズミは晩秋から初冬まで多くの果実が残存し、ツグミなどの渡り鳥によって短期間に採食されることが報告されていて、仮説にうまく当てはまるように思える。

果実の熟期が同一植物内で同調せず、果実序に異なった色の果実が付いているパターンと、果実の熟期が同調して同じ色の果実が長期間ついているパターンは、ガマズミ属に限らず様々な植物で見られる現象である。それぞれの種の果実、特に液果がどのような鳥類、動物によって採食されているかを丹念に調べていけば、生物群集レベルでの植物と鳥類、動物との関係が見えてくるだろう。

Sinnot-Armstrong, M. A., C. Lee, W. L. Clement and M. J. Donoghue. 2020. Fruit syndromes in Viburnum: correlated evolution of color, nutritional content, and morphology in bird-dispersed fleshy fruits. BMC Evolutionary Biology 20:7.
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サンゴジュの花



近所の公園で、植栽されたサンゴジュViburnum odoratissimum var. awabukiの白い花が満開だ。わずかに甘い香りがあるようだ。ガマズミ科ガマズミ属だが、先月、報告したガマズミとは花序の外観が全く異なる。長い柄をつけた大きな円錐形の花序が垂れ下がるように咲いている。花序の枝が赤みを帯びているので、分枝のパターンがよくわかる。対生に近いが、よく見ると出枝が微妙にずれている。偽対生とでも呼ぶような形だ。1本の枝から何度も分枝するので、多出集散花序と呼ぶ。この分枝を何度も繰り返すことで、大きな花序が作られている。



たくさんの昆虫がやってきていた。写真はニホンミツバチと思われるが、他にもモンシロチョウやスズメバチ類が来ていた。マルハナバチ類も来るようで、様々な昆虫に利用されているものと思われる。

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雄しべのやくは比較的大きく、たくさんの花粉がある。ミツバチの顔に花粉が付いているのがわかる。



花序の一部。蕾、開花中の花、すでに花冠を落とした花など、さまざまな開花ステージにある花が確認できる。花の寿命は確認していないが、1日か2日?、短そうだ。



花冠が落ちて、短い雌しべが見えている。雌しべの柱頭には、花粉がしっかり付いている。中央の雌しべはすでに柱頭が褐色になりつつある。



花冠からは5本の雄しべが、花冠の入り口を囲むように短く突き出し、やくが開いて、多量の花粉を出している。花冠裂片の基部が耳状に突き出しているのが面白い。



花冠を側面からみたところ。短い筒状の形がよくわかる。この花の雄しべはまだ開いていない。



よく似た形の花があるのを思い出した。写真はモクセイ科のネズミモチの花だ。花冠の裂片が4枚で雄しべが2本なのは異なるが、筒の形や長さ、雄しべが突き出す様子などが、とてもよく似ている。花序の形も円錐形でよく似ている。半月ほど前に多く咲いていた。おそらく、訪花昆虫も共通性が高いだろう。



花の断面。開きかけの若い花である。雄しべは花冠の上縁に着生しているが、まだ内側に折れ曲がったままで、やくも開いていない。花冠の底の雌しべの周りには大量の蜜が溜まっている。蜜腺ははっきりしないが、ガマズミ属の他の種では雌しべの基部から分泌されることが報告されている。



こちらは雄しべが開いた花の断面。花粉が出ている。一方、花冠内に蜜はほとんど見られない。蜜は開花の初期にだけ分泌されるのかもしれない。花の入り口は、ミツバチぐらいの大きさの昆虫が口を差し込むのに、ちょうどよいサイズに思える。


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住宅街の街路で植栽されたシナノキTilia japonicaの花が満開である。以前はシナノキ科とされていたが、現在ではアオイ科に含められている。白色の花は1cm足らず、枝先に集散花序を作って垂れ下がるように咲く。そのため花は横向きか下向きに咲くものが多い。



この日は曇天で気温も高くなかったがハナバチがやってきていた。ニホンミツバチと思われる。蜜を集めているようだが、花からは多数の雄しべが突き出し、ハチの脚には花粉がたくさん付いていた。シナノキの花には精油成分が含まれ、柑橘系の芳香があるとされているが、それほど強いものではない。



花序の枝は葉腋から出る。その脇には大きな副芽も見られる。花序には細長いへら形の苞葉があり、その中央付近まで花序の軸と合着しているのが特徴である。



苞葉と合着した部分より上側で花序は分枝し、多数の花を着ける。ひとつの花序に30~40個の花を着けているものが多いようだ。この写真では、開花中の7個の花と29個の蕾が確認できる。花序内で、花は順次、開花していくため、花序としての花期は比較的、長期に及ぶ。



苞葉と花序の茎の合着した部分。合着した部分の上端で苞葉は屈曲する。



花には5枚の厚いがく片、それよりも細く薄い5枚の花弁、さらに細い花弁状をした5本の仮雄しべがある。雄しべは多数である。がく片と花弁は互い違いの位置に付くため、花の上側から見ると、写真のようにがく片の内面が露出した状態となる。花弁と仮雄しべは上下に重なる位置に着いている。



蕾は5枚のがく片に固く被われている。表面には少数の鱗片毛がある。



開花後、間もないと思われる花。雌しべの柱頭はまだ短く、雄しべの半分ほどの高さしかない。雄しべのやくもまだ開いていない。シナノキの花は雄性先熟であることがわかっているが、この花は雄性期以前の状態である。



シナノキは蜜源植物として知られる蜜の多い植物だが、その蜜は、がく片から分泌されるのが特徴である。ボート形をしたがく片の内側に蜜が溜まっているのが見える。蜜はがく片の基部にある微小な腺毛から分泌される。がく片の基部に見える白毛は腺毛ではなく、その上を被い、分泌された蜜を溜めておくための毛である。さらに、がく片の縁には短毛が密生し、花が横向きや下向きになった時に、傾いたがく片から蜜がこぼれ落ちるのを防ぐ役割を果たしている。

がく片から蜜を出すのは、シナノキ属だけでなくアオイ科の植物で多く見られる性質である。通常、がく片は花弁の陰になって訪花昆虫から隠されてしまうため、がく片に蜜を溜めることは合理的とは言えないが、シナノキでは細い花弁の隙間からがく片が露出しているので、昆虫は容易に吸蜜できると考えられる。



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シナノキの花は3日間ほど開花し続けることがわかっている。この花序では、雄しべのやくは大部分、裂開して花粉を放出し褐色になっている(一部、花粉を付けた状態の乳白色のやくも見られる)。やくは小さく、花粉量は多いとは言え無い。また、雌しべの柱頭は長く伸びて雄しべとほぼ同じ高さに達している。開花後期の花と思われる。



柱頭の拡大。先端は5つに割れ、花粉を受け取れる状態になっているようだ。



シナノキでは、雄性期の終期に、一部の花が雌性期に移行することなく分離脱落してしまうことが知られている。実際、この樹の下にも多数の花が、落ちているのが見られた。



近寄ってみるとこれらの花には花柄が着いている。花柄の基部に離層が形成されて落ちたことがわかる。もちろん、これらの花が実を結ぶことは無い。すなわち、形態的には雄しべと雌しべを持つ両性花であるが、機能的には雄花で、花粉を放出することだけが役割である。



それではと、樹の梢を見上げると、一部に、開花後、ほとんどの花が落ちてしまっている花序が見られる。



一方、この写真のように、多くの花に、開花後も雌しべがそのまま残されている花序も見られる。これらの花は機能的にも両性花として機能し、種子生産に貢献すると考えられる。



がく片と花弁、雄しべが落ちた花の子房には、しばらく花柱が残っているが、やがて枯落ちてしまい、円形をした若い果実となる。

以上のような、シナノキの花の複雑な雌雄性については、すでに詳しい研究があり、機能的雄花と機能的両性花の比率は、その花(花序)の置かれた環境や資源配分の状況によって柔軟に変化すること、この柔軟性が繁殖を成功させ種子生産に役立つこと、さらに、昆虫に訪花された開花後期の花が、昆虫と共にそのまま落下してしまうことで、昆虫が他の樹に移動してしまう確率を高め、他殖を促進することなどがわかっている(Ito and Kikuzawa 2003, 2008)。

ところで、シナノキが、へら状の苞葉に風を受けて散布される風散布型の植物であることを考慮すると、散布体の重量は、1花序当たりの果実数に比例して変化するはずであり、結実率が高いと、その重さのため、散布される距離が短くなることが予想される。つまり、花序ごとの雌雄性の変化は、種子散布の距離にも影響を与えるはずである。そのような研究があるか調べてみたがわからなかった。生物の生態現象は、様々につながりあっていて面白い。

Ito, E. and K. Kikuzawa. 2008. Cryptic andromonoecy in Tilia japonica implicated by flower abortion. Plant Species Biology 14: 193-199.
Ito, E. and K. Kikuzawa. 2003. Reduction of geitonogamy: Flower abscission for departure of pollinators. Ecological Research 18: 177-183.

アメリカフウロとヒメフウロの果実


アメリカフウロとヒメフウロの果実を比べて見よう。



まず、これはアメリカフウロの花。アメリカフウロの花びらは基本的に5枚だが、がく片の一部が花びらのように変化して、この写真のように6枚あることがある。



手前側のがく片と花びらを取り去って中が見えるようにした花の側面。花全体は椀形で、雄しべの幅広の花糸が、雌しべの下部を被っている。雄しべの基部に蜜腺は無い。



花が終わると急速に子房が成長する。左側2個の花は、中の子房が見えるように手前側のがく片を取り去ってある。果実は5個の分離果で、上部が長い嘴となって伸びるのが特徴である。下部は楕円形に膨らんで、中に1個の種子があり、果体と呼ばれる。このような独特の果実の形がフウロソウ科の特徴で、嘴の部分が生態的に様々な機能を果たす。嘴の先には5本に分かれた柱頭が残っている。



果実は成熟してくると、まず、がく片がオレンジ色に紅葉し、次に果実全体が黒色を帯びる。写真中央には種子散布を終えた果実が見えている。

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成熟しつつある果実序。細長い果実が列柱のように立ち並ぶ。



果実や嘴の表面やがく片の縁には粗い毛が多く生えている。



成熟して乾燥した果実は、嘴の部分が歪んで反り返ろうとする。嘴は子房の中心軸(長く伸びた花床と雌しべの花柱)と合着しているわけでは無く、中心軸表面の細い溝の中にすっぽりとはまっているだけである。このため、嘴の曲がろうとする力にやがて耐えられなくなり、嘴は溝から外れて、上方へ勢いよく反り返る。この時、嘴の上端は中心軸についたままなので、上端が支点となって基部の果体だけが大きく動くことになる。すなわち、果体に大きな加速度が生じ、袋状の果体の中に入っていた種子が袋から放り出され、遠くへ飛ばされる原理である。しばしば、投石器に例えられる巧みな種子散布のメカニズムである。



反り返った果実の果体を基部側から見たところ。中心軸から外れる時点では開いていると思われる。袋の縁には白い毛がまとまって生えている。



袋状の果体と中の種子。種子の長径は1.5mmほどで、果体の袋の中に、緩く分離した状態で収まっているので、容易に放り出されるのだろう。種子は褐色で表面に細かな網目模様がある。

次にヒメフウロの果実を見てみよう。



成熟したヒメフウロの果実。子房の中軸の周りに、嘴と果体からなる5個の分離した果実が並ぶ構造はアメリカフウロと基本的に同じであるが、アメリカフウロよりは全体が細く、また、花柱(中軸上部の短い毛が生えた部分)の部分が相対的に長い。中軸中央を走る黄白色の部分が、果体とつながった嘴である。果体の上縁から出た細い糸が、嘴とは別に、中軸の上部にまで伸びてつながっていることがわかる。



がく片を取り去った、別の果実の側面。やや未熟な状態で、嘴と果体は黄白色、子房の中心軸は紅色を帯びているので、両者の境界が明瞭にわかる。嘴の上端付近は細くなっている。



果体の拡大。表面に網目状の隆起がある。中軸につながる糸は、果体の上縁から左右2本出ている。



採取した果実を袋の中に入れておいたところ、乾燥して中軸から外れた。しかし、アメリカフウロとは異なり、嘴の上端も中軸から外れ、さらに嘴と果体も分離してばらばらになってしまい、中軸にひっかかったまま残されていた。嘴の上端が固定されて反り返るアメリカフウロに比べると、自発散布によってタネ(果体)を飛ばす能力は低そうだ。さらに、果体には糸が付いているので、この写真のように、中軸にぶら下がり、植物体に絡まってしばらくそのまま残ることもある。

散布後、一時的に植物体に付着して残された種子や果実の散布については、アリによって持ち去られ、あるいは草食動物によって植物体ごと食べられて散布されることが想定される。ヒメフウロについて、アリによる散布は報告されていないが、ヨーロッパでの研究によれば草食動物による散布されると考えられている。

しかし、この糸は細く弱いので、強い風が吹けば容易に切れて果実も飛ばされてしまうだろうと思われる。実際、野外の植物体では、次の写真のように、嘴も果体も分離してしまい、表面に溝のある中軸だけが残されていることが多かった。



嘴と果体がはまっていた中軸の溝がよくわかる。



アメリカフウロとは異なり、種子は果体の果皮に包まれたまま散布される。中軸の溝にはまっていた部分(写真の中央側)には網目状の隆起が無い。表面に細かな粒状のものが見えるが、その正体についてはよくわからなかった。

このように、同じ属に入れられているアメリカフウロとヒメフウロの果実を比べると、果実の基本的な構造は同じであるが、散布の仕方に違いがあった。つまり、1)中軸と嘴、果体の分離の有無、2)種子だけが散布されるか、果体として散布されるか? 3)糸によって果体が中軸に付着したまま残るか否か、といった点が異なっていた。日本産のゲンノショウコや他のフウロソウはアメリカフウロと共通する散布様式を持つと考えられる。

また、同じフウロソウ科でもオランダフウロ属Erodiumや、園芸植物としてゼラニウムと呼ばれるテンジクアオイ属Pelargoniumの果実の嘴にはまた別の機能、すなわちドリルのように強く捻じれて果体を土の中に埋め込む機能があることが知られている。フウロソウ科の果実は、類似した形の果実を持ちながら、様々な状況に適応、進化してきたことがわかる好例であろう。

ヒメフウロの花



住宅街の道端で、ヒメフウロGeranium robertianum L.の花が咲いていた。ピンク色の花びらを持つ花は中々、可憐で、園芸植物として庭先にもよく植えられる。国内では東海地方や広島県、四国の石灰岩地に分布し、いくつかの県で絶滅危惧種に指定されている希少種だが、一方で、種としての分布域は極めて広く、ヨーロッパからアジア、アフリカ北部、北米に広く見られる。各地で、人為的なかく乱を受けた場所にも多く見られることから、移入種(侵略種)とされることも多く、北米での分布も、自生なのか移入なのか両方の見解があって決着がついていないようだ。日本でも、近年になって自生地以外の北海道や本州各地から次々と報告されるようになった。これらは日本在来の集団とは遺伝的に異なることが確認されている。おそらく園芸目的で庭に植えられた集団から逃げ出したものと推定されているが、では、どこからの移入かということになるとよく分かっていない。外部形態からは、日本在来の植物と移入した植物との区別は困難とされている。分類学的には、中々、やっかいな種なのである。



ヒメフウロの属するフウロソウ科Geraniaceaeは世界に5属およそ750種があり、そのうちの半数以上がフウロソウ属Geraniumに属している。日本には、移入種を含め13種が知られるとともに、様々な地域変種、品種が報告されている。属内で最もなじみ深い種は、薬草として有名なゲンノショウコであろう。ヒメフウロの花は比較的、小型で、花の基部が筒状にやや長く伸びているという特徴があり、節のレベルで他の日本産の種と分けられている。雄しべが花の中央に集まり、雌しべがよく見えないことが多い。花の構造がよくわからなかったので、少し詳しく観察してみた。



これは朝の6時に撮影した、開花直後と思われる花。10本の雄しべは花の内面に散在し、中央に集中していない。花びらも丸みが強く、一見、別種の花のように見える。3本の雄しべのやくが側面から裂け始めており、黄色い花粉が見えている。花の中央の雌しべはまだ短くて、よく見えない。



これも同時刻に撮影した別の花。やくの開いた4本の雄しべは花の中央に集まり、さらに右下の1本の雄しべのやくが開きかけている。



これも同時刻に撮影した別の花。上記2枚の花と比べると花びらが長く、前日かそれ以前に開花した花ではないかと思われる。10本の雄しべは全て中央に集まって花粉を出している。よく見るとその隙間から、少し開いた雌しべの柱頭が顔を覗かせている。



これは午前10時半に撮影した別の花。10本の雄しべのうち5本は中央に集まって、黄色い花粉を出し、5本の雄しべはまだやくが開かないまま、その周辺に離れている。当日の朝に開花した花と思われる。花びらは、かなり細長く伸びてきている。



これも10時半頃に撮影した別の花。すでに9本の雄しべは中央に密集し花粉を出している。花びらは細長い。花粉が花びらの上に飛び散っているのは、おそらく昆虫の訪花を受けたためと思われる。



これも10時半頃に撮影した別の花。花びらは細長い。雌しべの先の柱頭は開いて花粉を受け取る態勢になっているように思われる。雄しべのやくはすでに大半が脱落してしまっている。これは訪花昆虫によって、花が荒らされたためかもしれない。

415系1900番台(2階建てクハ415-1901)帯インレタ

花序は集散状で、茎の先端に2~数個の花がかたまって付く。花は、基部側の花から先端側の花の順に咲いていく。開花を終えた基部側の花の先端からは、先の開いた赤い柱頭が出ているのが見える。がく片は、開花時は赤みを帯びているが、開花し終えると緑色に変化し、中の子房を守るように再び固く閉じる。



花の拡大。花の径は1.5cmほどである。9本の雄しべが既に花粉を出し、中央に集まっている。花びらの上にも黄色い花粉が着いている。右側は開花を終えた花で、よく見ると先端から突き出した柱頭の上にも黄色い花粉が載っているのが見える。



側面から見た花の拡大。花の下半分は細い筒状である。花びらは中央付近で曲がって広がる。がく片にははっきりした3稜があり、先端はのぎ状に長く伸びている。表面には、長く伸びた白色の腺毛が多い。



手前側のがく片と花びらを取り去った花。雌しべは雄しべに隙間なく囲まれていて見えない。雄しべの基部には黄緑色の丸い蜜腺がある。この蜜を吸うためには、花びらと雄しべの狭い隙間に口を差し込まなければならない。ある程度、長い嘴を持つ昆虫で無ければ無理だろう。先端にやくの無い雄しべがあるのは、やくが落ちてしまったためと思われる。やくはいわゆる“丁字やく”で、極めて細くなった花糸の先端に不安定に付いているため、少しの力が加わっただけで脱落しやすいのだろう。



さらに、手前側の雄しべも取り去った花の側面。中央に雌しべが長く伸び、雄しべのやくの近くまで達しているが、この段階においても、赤みを帯びた柱頭はまだ開いておらず、花粉を受け取れる状態には無いと思われる。雌しべは5枚の心皮から構成され、心皮の先端側3/4ほどは合着している。一方、基部側1/4ほどは、離生しており、写真では二段に分かれて膨らんでいるのがわかる。ここが成長に伴い、果実の嘴と果体(種子を含む楕円形の部分)に発達する。

さて、以上のようにヒメフウロの花の雄しべや雌しべの形や状態は、開花後の時間経過とともに変化していくことがわかったが、この変化は生物学的にどのような意味があるのだろうか。



フウロソウ属の種では、雄性先熟性を示す花が多く観察されている。これはその代表であるゲンノショウコの花である。花の径は1.5cm足らずでヒメフウロと大差ないが、花は浅い皿状で下部も筒型にならない。2個の花のうち右側の花の方が開花後、間もない若い花で、紫色のやくは裂けて花粉を出しているが、中央にある雌しべの赤い柱頭は、まだ閉じたままで花粉を受け取る態勢に無い。これが雄性期の花である。その後、雌しべの柱頭が開き初め、花粉と同時に見られる両性期を経て、雄しべが萎れ、柱頭だけが開いている雌性期の花へと変化する。写真左側の花が雌性期にあたる花である。ゲンノショウコでは、雄しべのやくは花の内側に散在したままで、花の中央に集まることは無いことに注意。このように、一つの花の中で雄性と雌性の時期がずれるのは、同花受粉を避け、他の花との交配を促進して遺伝子の多様性を保つ仕組みと考えられている。



一方、同じフウロソウ属でも、雄性先熟性を示さず、同花受粉を行うとされている種もある。これはその代表である北米原産の移入種アメリカフウロの花である。花の径は1cm足らずで、ヒメフウロよりも小型である。雄しべは、雌しべに接するように花の中央に集まっている。雄しべと雌しべの長さはほぼ等しく、やくが開けば、柱頭に同じ花の花粉が容易に付着するような位置関係になっている。ヒメフウロとは異なり蜜腺は持たない。このような同花受粉を行う種は、比較的、小型の花を持ち、かく乱を受けた立地に侵入して移入種となる種が多いと言われている。他花との交配を促進して遺伝子の多様性を高めることは犠牲にしても、同花受粉によってまずは種子を生産し、侵入先で増えていくほうが、このような状況では生態的に優先性が高いと考えられるので、理にかなった繁殖方法と言える。



これは雄しべが萎れ、雌しべの柱頭が大きく開いた状態のアメリカフウロの花。花粉はすでに見られないが、花粉は受粉可能な態勢にあるようも見える。最近の研究では、アメリカフウロにおいても、同花受粉でなく、他花受粉を行うことで、遺伝子レベルの多様性が予想以上に高く保たれていることも分かってきている。開花後の時期によって、同花受粉と他花受粉の両方を行う両掛け的な戦略を取っているのかもしれない。

今回、観察したヒメフウロの開花過程は、上記のゲンノショウコともアメリカフウロとも異なる特徴を持っている。ひとつの特徴は開花後すぐに雄しべが花粉を出して、全ての雄しべが花の中央に集まることである。この性質はアメリカフウロと共通するが、ヒメフウロでは雌しべはまだ短く、柱頭も閉じたままなので同花受粉には直結しない。

また、ポリネーターに関し、浅い花を持つゲンノショウコでは、ハナアブ類が主なポリネーターとされているが、ヒメフウロでは花の下部が筒状なので、ポリネーターも異なっているかもしれない。筒状の花から蜜を吸うためには、筒の入り口付近から口を差し込む必要があるので、雄しべのやくが花の中央に集まることは、むしろ訪花昆虫に効率よく花粉を付けることに役立っていると考えられる。

一方、開花が終わりに近づく頃には、雌しべもようやく長く伸びて、雄しべのやくの間から曲がった柱頭が外側に出てくる(この頃には、雄しべのやく自体が脱落してしまっていることも多い)。したがって、訪花昆虫から他花の花粉を受け取ることも可能かもしれない。さらに最後には、雌しべは雄しべのやくが集まった部分を突き抜けるようにして長く伸びるが、この時に雄しべの花粉を開いた柱頭の上に載せて伸びていくことも観察された。したがって、最終的には同花受粉によって種子を生産することが保証されているのかもしれない。

以上のようなヒメフウロの受粉過程に関する仮説は、現時点ではほぼ完全にスペキュレーションに過ぎない。分布域が広く、様々な形態的、生態的変異が報告されていることもあり、移入先での生態的条件が、自生地での生態的条件とは異なっていることも多いと考えられるので、ある場所での調査結果が、どれほど一般化しうるものなのかも保証がない。とても興味深いが、きちんと調べるには、やはり中々、難しい種だといえよう。
プロフィール

Author:forestplant
博物館で植物系の学芸員をしていました。大きな樹や森が好きで、その生態について研究してきました。最近は、デジカメなどテクノロジーの進化によって、誰でも簡単に、様々な観察をして、わくわくするような発見をすることが可能となりました。そんな、植物観察の楽しさを発信していきたいと思います。
なお、本ブログの文章、写真の無断転載を禁じます。

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